2023.3.23 木曜日
【そのお仕事に必要な商標は「コレ」です】ユーチューバー/Vチューバーがとるべき商標とは?【商標登録】
これから、ロゴマーク作成、そして商標登録をお考えの方に、具体的な「お仕事」別にポイントをお伝えする、この不定期連載。
第一回
クラフトビールを創業する人がとるべき商標とは? https://logoto-r.com/760/
第二回
農作物のブランド化を目指す事業者がとるべき商標とは? https://logoto-r.com/850/
に続きまして、
第3回となる今回は、弊所にもお問合せが増えている、ユーチューバー/Vチューバー(TikTokerでも同様ですが)の皆様が、どのように商標登録をすべきか、まとめてみたいと思います。
①なぜ、ユーチューバー/Vチューバーに、商標登録がマストなのか
これはミュージシャン、アーティストと共通する観点ですが、「音楽の演奏や動画配信」を提供をする、それらをライヴで伝える「音楽の興行の企画・主催」等をする際に、掲げている「アーティスト名、(YouTube等の)チャンネル名、芸名、グループ名等、あるいはそれらのロゴマーク」などは、ファンが自分の好きなユーチューバーの作品・公演にたどりつくための”目印”になっているんですね。これは、まさにチャンネル名等が「商標」として機能していることに他なりません。
商標登録をすれば、その等、あるいはそれらに類似する商標を、独占的に使用できるという安心感が生まれますよね。
また、これもミュージシャン等とリンクし得る部分ですが、CDやDVD市場が以前に比べればシュリンクする一方、伸びているのが「マーチャンダイジング」(グッズ、物販)のジャンルですよね。これらにもチャンネル名等やそれらのロゴマークが付されていることで、商品価値が生まれます。その商品価値=ブランド力であり、そのブランド力を、「商標権」という知的財産権の一種で守ってくれる、事業者の無形資産としてくれるのが、商標法に基づく商標制度、なのです。
(ユーチューバーに限らず、他にもある商標登録のメリットを紹介した記事はこちら)
「商標登録」をしておくメリットとは? “攻め”と”守り”の観点から、弁理士が解説します
https://www.shares.ai/lab/chizai/2095354
では、具体的には、どのように商標登録を進めていけばいいのでしょうか。
②ユーチューバー/Vチューバーが、商標登録をすべきはチャンネル名?ロゴ?
チャンネル名と、ユーチューバー/Vチューバーとしての名称は、全く同一ではないかもしれませんが、チャンネル名の中でも特にメインの”目印”として機能しているのは、ユーチューバー/Vチューバーとしての名称(個人の芸名だったり、グループ名だったり)でしょう。したがって、その名称の「文字」は、商標登録の候補となります。
もう一つ、アイコンなどに使用しているロゴマークが存在する場合はどうでしょう。これも当然”目印”になっていますし、マーチャンダイジングなどにもそのまま使用されることがあるでしょうから、いわゆる「図形商標」として、やはり商標登録の候補となります。
それぞれ個別に商標登録できればいいのですが、予算などの都合で1件しか登録できないという場合であれば、
◎ロゴマークがあって、その中にユーチューバー等としての名称の「文字」が含まれているなら、そのロゴマーク全体(図形商標)としての登録が優先。
◎特定のロゴマークがない/決まっていないのであれば、ユーチューバー等としての名称の「文字」(文字商標)としての登録が優先。
となるかと思います。
なお、YouTubeに関連する文字としては、「ハンドルネーム」もありますね。@〇〇(ローマ字)で、ネームというよりは「ID」と考えたほうがいいでしょうか。URLも「youtube.com/@〇〇」が作成されます。
これも確かに、皆さんの活動の”目印”として機能するので、商標登録を検討してもいいのですが、
*YouTubeにおいては、このハンドルは固有なので、同じものが他者に割り当てられる心配はない。
*もし、ハンドルが、(商標登録する)アカウント名をローマ字表記にしただけのものであれば、アカウント名の類似範囲として、商標登録で一定の保護ができる
ため、ハンドルネームの商標登録の優先順位は、少し下がるかなという印象です。
③ユーチューバー/Vチューバーの商標登録で、指定すべき「区分」とは?
商標登録出願は、その商標を(”目印”として)使用する商品・サービスを指定して出願します。そして、登録が認められた場合は、その指定した範囲で商標権が発生します。
そして、世の中の商品やサービス(※役務、といいます)は、45種類(第1類〜第45類)の「区分」に分類されています。
当然、今回のケースでは、ユーチューバー等が提供するさまざまなサービスや、その名称等を付するマーチャンダイジングについて、個々の商品を指定する必要がありますよね。しかし、これらが異なる区分(第何類か)に属することがあるのです。
ユーチューバー/Vチューバーの活動の柱といえば、何といっても動画の提供ということになりますが、第41類に以下のような指定役務があります。
第41類「インターネットを利用して行う映像の提供」
また、この指定役務を、より具体的にした表現(例「コンピュータネットワークによる画像・映像・音楽・ゲームの提供」)でも、登録が認められることがありますので、検討に値しますね。
この第41類には、他にも「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」「音楽の演奏」といったライヴに関する役務や、「知識の教授」「セミナーの企画・運営又は開催」といった教育系の役務なども分類されており、これらは配信に限らず、対面でのリアルライヴなども対象になります。
また、「電子出版物の提供」というサービスも同じ第41類ですが、注意したいのは、
第9類「電子出版物」
つまり、「電子出版物」という”商品”自体は、区分が異なるわけです。ダウンロードさせるコンテンツ自体に、商標を付する場合は、この区分も指定する必要があります。他にも「レコード」「録音済みのコンパクトディスク」「インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル」なども分類されていますので、音楽レーベルとしてもこの商標を使用する場合は、この区分の指定がマストになります。
そして、そのマーチャンダイジング(グッズ、物販)を製造販売する場合も、それぞれの商品の範囲を指定する必要があります。
人気が出れば、ありとあらゆるマーチャンが考えられていくわけで、その範囲(区分)も広く考えていかなければいけないのですが、早い段階から商品化されることが多いものとしては、以下などが考えられます:
第16類「ステッカー」(※「印刷物」全般が分類)
第18類「トートバッグ」(※「かばん類」等が分類)
第24類「タオル」(※「布製身の回り品」等が分類)
第25類「ティーシャツ」(※「被服」「帽子」等が分類)
なお、この区分とは、特許庁に出願時・登録時に納付する費用にも影響を与えます(※区分数が増加するほど、これらの費用も上昇していきます)。弁理士に出願等の手続き代理を依頼する場合の費用は、弁理士(事務所)ごとですが、これも区分数に連動させている事務所は多いので、総額費用のお見積りを確認しつつ、その商品・役務の使用予定と照らし合わせながら、指定する区分の決定することをお勧めします。
④誰も登録できない商標・特定の人だけが登録できる商標
商標登録の原則は「早い者勝ち」です。もう少し詳しくいえば、③で説明した「指定商品・指定役務」が重複する範囲で、せっかく自分で思いついたブランド名と、同一か類似の商標を、他人が既に出願(→登録)していれば、商標登録は受けられません。
ただ、世の中には「誰もまだ登録していない」のではなくて、「誰に対しても登録が認められない」商標というものがあります。そのポイントは、その商標に”目印”となる力(「識別力」、といいます)があるかどうか。つまり、他人の商品等と、しっかり区別することができるか、という点です。
たとえば、極端な例で言えば、「指定役務『音楽の演奏の興行の企画又は運営』について、商標『コンサート』とか、商標『音楽フェス』を登録したい」と思っても、指定役務の一般名称・普通名称が「コンサート」とか「音楽フェス」なわけですから、他人の商品と区別する識別力がありません。こういう商標は、誰にも登録が認められないわけです(※誰か一人に独占させるのはよくない、という観点もあります)。
このような識別力のない商標を「記述的商標」と呼んだりします。
株式会社ドワンゴが、(「ゆっくり茶番劇」の騒動のあと)出願した「ゆっくり実況」という商標に、現在拒絶理由通知がなされていますが、https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2022-058346/38E6D4A68F27611D86880A08477008DDFC6B9BB1DA33F29228F5C16D035F15E2/40/ja
その拒絶理由も「記述的商標」である(商品の品質や役務の質、内容をただ説明しただけの文字商標は、誰にも登録が認められない)という判断になっています(※2023年3月23日時点で、拒絶査定は未確定)。
※なお、識別力のない文字に、ロゴマーク(※一般的には、図形には識別力が認められます)を加えれば、記述的商標とはならずに、登録できる可能性が出てきます。
他にも、商標法には、さまざまな拒絶理由が定められているのですが、ユーチューバーがらみでいえば、
◎「YouTube」の文字を含む商標は、(Google社による出願以外は)登録が認められない
という審査判断になっています。拒絶理由としては、商標法4条1項15号「商品又は役務の出所の混同のおそれがある商標(の登録を受けることができない)」が適用されることが多いです。
第三者が「YouTube〇〇」「◯◯ユーチューバー」のような商標を出願しても、登録出願前より取引者、需要者間にGoogle社のブランドとして広く認識されている商標「YouTube」の文字を有してなる商標は、Google社と何らかの関係を有する者が提供するサービスであるとして、混同誤認を生じさせるおそれがあるため、登録が認められないわけです。
⑤ユーチューバー/Vチューバーの商標登録をすべきなのは、どのタイミングか?
ユーチューバーとしての活動を始めるときにその名称を決めると思いますが、「人気が出てきたら商標登録考えます…」というのが、一番危険なパターンです。前述のとおり、商標登録の大原則は「早い者勝ち」ですから、後回しにしておくと、他の人に先に出願→登録されてしまうかもしれません(そうなったら、あなたの商標は、登録できないことになってしまいます)。
もっといえば、商標登録をせずに配信等の「サービス」を提供してしまった後になって、実は自分のアカウント名等が、他の人が登録していた商標と同じ又は似ていた場合、その人の「商標権侵害」となってしまいます。想いを込めて名付けた銘柄を、変更しなければいけなくなれば、精神的な痛みだえけでなく、マーケティング/経済的な痛み(アカウント名、ウェブサイト等の変更…最悪、損害賠償も)も伴います。
なお、②とも関連する話ですが、ロゴマークに文字(商品のブランド名)が含まれている場合、「ロゴの図形は類似ではないんだけども、文字が同一又は類似である商標」も、類似と判断される可能性が高いです。
ということは、先に他人によって(動画配信と類似する役務の範囲で)同じアカウント名(文字)が先に出願されていたら(※いわゆる先願です)、あなたのロゴマークは先願との類似を理由に拒絶され、登録ができない可能性が高くなります。
「これで行きたい!」というアカウント名の第一希望案が決まったら、それで具体的な活動に走り出す前に、ぜひ商標登録に向けて、登録可能性の調査から始めてください。特に、ロゴマークにアカウント名を含める場合、そのデザインをし始める前に、そのブランド名(文字)の登録可能性を調査する必要があることにご注意ください。
逆に言えば、もし、すでにユーチューバー/Vチューバーとして活動し始め、軌道にのっている=「視聴回数も増えてきたな、アカウント名にブランド力がついてきたな」と感じているのに、まだ商標登録出願をされていないという方。もう”待ったなし”です。大至急、商標登録出願に向けて、”商標に強い”弁理士にご相談ください。
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