2021.10.29 金曜日
【ロゴ作成】 ロゴマークって、商標?意匠?著作物??
「『ロゴマーク』をつくったんだけど、どんな権利で守れるのかわからない」
「デザインというと、『意匠権』というものがあると聞いたんだけど、ロゴマークで取れるのか?」
「センスのいいロゴマークなんで、これは著作権があるはずだから、商標権とかは要らないよね?」
といったご質問をいただくことはよくあります。確かに、わかりづらいですよね。
3つの権利について概ね共通する点は、「〇〇権」の権利者だけが、その〇〇を実施(利用、使用)できるという点です。他者が、その〇〇と同じものや、類似するものを無断で実施等していれば、差止も可能です。
ではなおさら、どの権利を取ればいいのか(取れるのか)、1つでいいのか、取れるなら全部取るべきなのか、という疑問も出てくると思います。
今回は、なるべくシンプルに、その疑問点について、以下のとおり整理してみたいと思います。
①すべてのロゴマークに、著作権があるとは言えない。その理由とは?
②ロゴマークについて、意匠権は取れ得る。しかしその制約とは?
③ロゴマークは、商標権で保護するのが王道。でもその目的とは?
①すべてのロゴマークに、著作権があるとは言えない。その理由とは?
ロゴマークでも、そこに「イラスト」が含まれる場合は、まず(その部分について)著作物と考えていいでしょう。著作物の種類としては「美術の著作物」というものですね。
その著作権は、著作物を創作した人、つまり「著作者」に帰属します(※特に、手続きは必要なく、権利が発生します)。
一方、イラストなどは含まず、文字をシンプルにデザインしたロゴ、いわゆる「ロゴタイプ」の場合は、まず「著作物には該当しない」可能性のほうが高いです。
そもそも、どんなものが著作物となるのかについては、著作権法2条1項1号
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
と定められています。「美術」はこの条文にも含まれていますし、創作性(美術作品としてのクオリティ)は判断要件とはなりませんので、「イラスト」なら著作物、と敢えて上では言い切ったのですが、
微妙なラインのものであれば、この条文に当てはめて、判断されるわけです。
そして、実際、ロゴタイプは「著作物ではない」とした判例(※)も存在します。
「Asahiロゴマーク事件」(東京高判平成8年1月23日 (東京高判平成8年1月23日 平成6(ネ)1470))と呼ばれるものですが、
※これらのロゴタイプの著作物性が認められませんでした。
「文字は万人共有の文化的財産ともいうべきものであり、また、本来的には情報伝達という実用的機能を有するものであるから、文字の字体を基礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を認めることは、一般的には困難であると考えられる。」
「仮に、デザイン書体に著作物性を認め得る場合があるとしても、それは、当該書体のデザイン的要素が「美術」の著作物と同視し得るような美的創作性を感得できる場合に限られることは当然である。」
として、ロゴタイプの著作物性が否定されたのです。
もちろん「イラストは含んでいないが、単なるロゴタイプではなく、美術性の高いロゴデザインとなっている」というような、著作物性について判断の微妙なケースも多いと思います。
ここで、良くも悪くも、著作物の場合は、(特許庁や文化庁による審査などを経ずして)創作した瞬間に、著作者に発生することになっていますから、「本当にそれが著作物なのか=著作権があるのか」が、はっきりしないのです(※問題も生じていないのに、裁判をするわけにもいかないでしょうし)。
したがって、「ロゴマークを、著作権だけで守る」と考えるのは、非常に危険と言えます。
②ロゴマークについて、意匠権は取れ得る。しかしその制約とは?
意匠権とは、「物」等のデザインに対して与えられ得る権利です。そもそも意匠とは、かつては単に「物品」の美的外観と説明されてきましたが、昨年4月1日に施行された改正「意匠法」で、(アプリ等の)「画像の意匠」や、「建築物・内装の意匠」も、登録の対象に加わりました。
しかし、「デザイン」というと、著作物(著作権)ともからんできそうですよね。一体何が違うのでしょうか? ロゴマークだってまさに「デザイン」ですが、意匠権は取れる/取った方がいいのでしょうか…?
まず、意匠権と著作権の住み分けですが、原則的には、
・絵画などの「純粋美術」は、著作物として著作権で保護される
・意匠権は、工業上利用できる物等のデザインが保護の対象となる
とされます。
たとえば、一点物の絵画などは、間違いなく著作物であり、著作権が作者(著作者)に与えられますが、たとえ造形が美しくても、大量生産することを想定している家具などは、「応用美術」といわれ、意匠権の対象なんですね(稀に、大量生産される「人形」や、「椅子」などを、著作物と認定した判例もありますが)。
そして、意匠権が、著作権と大きく異なる点は、「特許庁に出願をし、審査を経て、登録によって発生する」という点ですね。意匠権は、商標権や特許権と同じグループ(産業財産権)ということです。
さて、本題の「ロゴマークを意匠権で保護できるか・すべきか」ですが、この権利はあくまで「物等」のデザインが対象ですから、ロゴマークが何かの物等と結びついた状態で、そのデザインを保護することになります。
たとえば、Tシャツという「物」の一部に、そのロゴマークがあしらわれていたら、その物のデザインとして意匠登録出願することは可能です(「部分意匠」といって、そのTシャツの、ロゴマークの部分のみを対象とする制度もあります)。
確かに、ロゴマークを、そうした一つの「物」にしか使用しないのであれば、確かに意匠登録も検討できるかもしれません。
しかし、ロゴマークを複数の商品に使用する場合、その商品ごとに出願・登録をしなければなりません(※商標のように、複数の商品を指定することができません)。また、そもそも、サービス(役務)の”目印”として使用するロゴマークであれば、「物」等の一部にはなりえませんから、意匠登録はできないですよね。
また、著作権が「著作者の死後70年」存続し、商標権は、10年単位ですが何度でも更新可能であることに比べると、意匠権は「出願から25年」で権利が消滅しますので、(昔に比べれば長くなっているとはいえ)存続期間が短く感じますよね。
③ロゴマークは、商標権で保護するのが王道。でもその目的とは?
ということで、結論としてはやはりロゴマークは、商標権で保護するのが王道です。商標権は、意匠権と同様、特許庁に出願し、審査を経て、商標登録が認められることにより発生しますので、一度発生した商標権というのは、「誰の権利か」という点も含めて、かなり権利が安定しています(原則「早い者勝ち」ですから、類似する商標が、複数の人に登録されることはないのです)。
しかし、著作権や意匠権と、商標権とでは、その目的が大きく異なっています。前者2つは、あくまでそのデザインを保護するものであるのに対し、
商標権は「その商標に積み重なる信用=ブランド力」を保護する
というのが目的です。
どういうことかというと、たとえばある商品に、”目印”としてロゴマークを付けて、製造・販売します。その商品が人気となってくると、取扱店やお客さんは、その商品のロゴマークを手がかりに、商品を手に取るようになります。そうした人気・評判がさらに進めば、他におなじような商品があっても、「そのロゴマークがついているから、高くても買う」という顧客も出てきます。これこそ、ロゴマークという商標に積み重なる「ブランド力」です。
このブランド力は誰のものか?当然、そのロゴマークを、自社商品につけて販売してきた者ですね。その者だけが独占的にそのロゴマークを使えるようにしてあげる権利・・・それが商標権なのです(※”目印”となるのは、ロゴマークに限りませんので、商標登録の対象は文字や立体的形状もあります)。
ですから、商標権は、出願時に「この商標を使います」という意味で、指定した商品・サービスの範囲でしか生じません。つまり、登録商標となったロゴマークと、そっくりなロゴマークを、他者が「指定した商品と類似しない範囲」で使用していても、使用の差止などはできません、
これが、著作物自体を保護する「著作権」であれば、他者が(自身のロゴマークとそっくりの)ロゴマークを、どんな商品に使用していても、著作権侵害として差止請求できる可能性があります。しかし、その最終的な判断は法廷の場に持ち込まれます。そして、ただそっくり(類似)であるというだけでは侵害とはならず、自身の著作物を知っていて、真似をした(依拠)という点も証明しないと、著作権侵害は成立しないのです。
一方、商標権ならではの強さもあります。たとえ知らずにそっくりなものを作って、使用していたとしても、「知らなかった」「真似していない」という言い逃れができません。登録商標は、公報で公開されているため、「知っていた」ことになってしまうのです。
まとめ
やはり、ロゴマークの保護は、しっかりと商標登録をし、商標権をすることで守りましょう。そして、そのロゴマークが、著作物として著作権も有する可能性があれば、(その著作者と権利関係の帰属をしっかり取り決めながら)併せて著作権でも保護していきましょう。
さらに、弁理士のような知財の専門家に相談すれば、「この場合は、意匠登録(意匠権)もしたほうがいいですね」というケースでは、そのアドバイスをもらえるでしょう。
やはり、ロゴマークは、「商標登録してナンボ」ですね。
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