2026.10.16 金曜日
【レーベル・ロゴの世界】第10回「PIZZA OF DEATH」
ロゴマークを愛し、音楽を愛する弁理士による、世界のレコード会社・レコードレーベルのロゴマークへの、片思い的リスペクトを込めてご紹介する連載です。
その第11回ですが、今回は日本のレーベル、しかし世界に誇るレーベル・ロゴを取り上げたいと思います。
PIZZA OF DEATH (RECORDS)です。
https://www.pizzaofdeath.com/
パンク・ロック好きの方には、もう説明不要とは思いますが、それでもこのタイミングでとりあげようと思ったのは、
このレーベルとは切っても切り離すことのできないアーティスト「Hi-STANDARD」(ハイスタ、ですね)が主催する伝説的なフェスが、来たる2026年11月7日に、8年ぶりに開催されるんですよね。
AIR JAM(エアジャム)です。
「AIRJAM 2026」
https://airjam.jp/
1997年に初開催され、パンク・ロックを中心とした音楽に加え、スケートボードやBMX、ストリート・ファッションなど、さまざまなカルチャーが交わる場として、日本の音楽シーンに大きな影響を与えてきたフェスです。
今回も、ハイスタを筆頭に、10-FEET、HUSKING BEE、マキシマム ザ ホルモン、さらにはアメリカからLAGWAGONなど、国内外の強力なアーティストが出演します。
(こちらはAIR JAM 2011のTrailer映像)
これを機会に、この一度見たら忘れられないロゴを持つレーベルが、どのように生まれ、なぜこれほどまでにファンから愛される存在になったのか…
ロゴマークと商標権の観点から注目してみたいと思います。
「PIZZA OF DEATH」は、最初から独立したレーベルではなかった?
さて、この「PIZZA OF DEATH」というロゴマークですが、商標登録もしっかりとなされています。
登録4483343号(※第9類 指定商品「レコード」等の他、アーティスト・グッズでもよく使用される第14類・16類・24類・25類・26類・28類の指定商品を指定)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2000-089364/40/ja
そもそも、このレーベル名が生まれたのは1994年。ハイスタがミニアルバム『LAST OF SUNNY DAY』を発売したときのことでした。
この経緯については、PIZZA OF DEATH(法人としてのピザ・オブ・デス・レコーズ)の代表であり、ハイスタのギタリストでもある横山健さんが、ご自身の公式コラムで詳しく説明されていらっしゃるのですが、
横山健の別に危なくないコラム Vol.83
https://www.pizzaofdeath.com/column-ken/vol83/
それによると、当初ハイスタは、あるインディー・レーベルから同作を発売する予定だったのですが、なかなか発売が実現せず、紆余曲折の末、TOY’S FACTORYの関連会社を通じてリリースできることになったそうです。
しかし、TOY’S FACTORY本体から発売するわけではなかったため、独自のレーベル名が必要になり、
そこで生まれたのが、「PIZZA OF DEATH RECORDS」だったんですね。
つまり、最初から独立したレコード会社として構想されていたわけではなく、ハイスタの作品を発売するために(ある意味、便宜上?)生まれたレーベル名だったのです。
その後、ハイスタの成功とともに、ハイスタのマネージメント会社だった「ハウリング・ブル・エンターテイメント」の傘下にレーベルが移管され、他のアーティストの作品もリリースできるようになっていきます。
いわゆるレーベルとしての「色」が明確になり、そして素晴らしいアーティストを紹介するレーベルだ、という「信頼」を積み重ねていったわけです。
そして1999年、遂にPIZZA OF DEATH RECORDSは、横山健さんを代表取締役社長として法人化(有限会社ピザ・オブ・デス・レコーズ)し、完全に独立しました。
上記のロゴマークの登録商標も、同社によって登録されたものです。
インディー・レーベルとして成し遂げた『Making The Road』の画期的な成功
レーベルとして完全独立後にリリースされたのが、ハイスタの 3rd フルアルバム「Making The Road」です。
今でこそこうして、ストリーミングでも聴ける同作ですが、リリース時はCDがほぼ唯一のフォーマットという時代でした。
当然、CD市場も大きく、販売枚数を競うチャート/ランキングで上位に食い込むためには、全国のCDショップへの流通が非常に重要でした。
その点、メジャー・レーベルであれば、卸売・小売への販売促進や全国的な流通ルートに優れていますし、当時はTV CMなども駆使しながら、大規模な宣伝を展開していました。
一方、インディー・レーベルの場合はどうでしょう。
現在こそ、全国的な流通を担う独立系ディストリビューターも発達していますが、当時、全国各地のCDショップの隅々まで商品を届けることは、決して容易ではありませんでした。
ましてや、マスメディアを使った大規模な有料広告も、簡単にできるものではありません。
そんな状況にもかかわらず、この作品は、初登場でなんと、
オリコン3位
を記録したのです。
※ちなみに、この週の1位・2位は、L’Arc〜en〜Cielが同時発売した『ark』『ray』でした。
そして最終的には、国内外でミリオンセラーとなる大ヒットを記録したのです。
しかし、このメガヒットの背景には、レーベル自身による流通の努力に加えて、口コミや草の根のプロモーションがあり、そして何より、
レーベルとファン、そしてファン同士の強い結びつき
があったからこそ、と言えるのではないでしょうか。
そして、ここで注目したいのは、単にアルバムが大ヒットしたということだけではありません。
「PIZZA OF DEATHが送り出す音楽なら、間違いない」
そんなファンの信頼が育まれ、レーベル自体が、一つのブランドとして存在感を高めていったということです。
一方、ハイスタはその後、「AIR JAM 2000」を節目に活動を休止し、「AIR JAM 2011」で活動を再開するという激動の過程をたどります。
そして2017年には、アルバム『THE GIFT』で遂にオリコン1位を獲得するという快挙もありました。
一方、2023年には、オリジナル・メンバーのドラマー、恒岡章さんを亡くすという、とてつもなく大きな試練を経験しました。
その後、新たなドラマーとしてZAXを迎え、2025年にはミニアルバム『Screaming Newborn Baby』を発表。
ツアーも経て迎える2026年の「AIR JAM」は、彼らにとって、また新たな大きな節目となりそうです。
ハイスタだけじゃない! 日本のパンクシーンを育てたレーベル
さて、PIZZA OF DEATHといえば、もちろんハイスタですが、その功績は彼ら自身の作品だけにとどまりません。
レーベルが独立する以前からHUSKING BEEなどの作品をリリースし、独立後もHAWAIIAN6、COMEBACK MY DAUGHTERS、WANIMAなど、さまざまなバンドの音楽を世に送り出してきました。
現在もKen Yokoyama(※bandとしての活動は、「SATANIC CARNIVAL 2027」をもって活動休止)、KUZIRA、SLANG、Suspended 4thなど、多彩なアーティストを擁しています。
ここで面白いのは、単に似たようなサウンドのバンドばかりを集めているわけではない、というところです。
横山健さんは前述のコラムで、PIZZA OF DEATHが良いと思ったバンドであれば、ジャンルにとらわれずにリリースしていくという考え方を示しています。
確かに、メロディック・パンクからハードコア、さらには異なる音楽性を持つバンドまで、かなり幅広いんですね。こう見ていくと、このレーベルをつないでいるのは、単純な「音楽ジャンル」だけではなく、
音楽に対する姿勢、あるいはアティチュード
なのではないかとも感じます。
そうした視点にこだわった発掘、育成、そして制作・販売。それらを貫き続けたからこそ、アーティストとの信頼関係、そしてファンとの信頼関係を築くことに成功したのでしょうし、だからこそ日本のパンク・シーンの醸成に貢献してきたのでしょう。
ファンだけでなく、バンド自身が「背負いたい」ロゴマーク
さて、ここで今回の主役、ロゴマークに戻りましょう。
https://www.youtube.com/@pizzaofdeathofficial
このロゴをデザインしたのは、パンク・バンドBBQ CHICKENSのヴォーカリストとしても知られる、HONGOLIAN(ホンゴリアン) さんだそうです。
「Musicman’s RELAY」第227回 有限会社ピザ・オブ・デス・マネージメント 代表 磯部友宏氏【前半】https://www.musicman.co.jp/interview/730876
ロゴマークの「ブランド力」というと、いわゆるハイファッションのブランドを想起する人も少なくないと思いますが、実はそうしたブランドに限られません。
上述の通り、このレーベルロゴには、ファンとの強い結びつき、アーティスト及びファンとの信頼関係が積み重なっているといえます。これこそ「ブランド力」なのです。
だからこそ、このロゴマークがついているレコード/CDを安心して購入するファンが大勢いて、このロゴマークを付して作品をリリースしたいアーティストが契約していくんですよね。
そんなファンとしての憧れと、アーティストとしての夢を、「両立」してしまったアーティストもいます。
2024年、PIZZA OF DEATHとのマネジメント契約を発表したガールズ・バンド「サバシスター」です。
そのヴォーカリスト、なちさんは、なんと、かつてPIZZA OF DEATHで働きたいという思いから、グラフィックデザインを学べる専門学校に進学したとのことですが、その理由の一つが、
PIZZA OF DEATHのロゴが格好よかったから。
だったそうです。
「サバシスター なち×横山健 インタビュー/Real Sound」
https://realsound.jp/2024/01/post-1537116.html?utm_source=chatgpt.com
ロゴマークとロックを愛する商標専門の弁理士として、これほど印象深いエピソードはないですね。
音楽への共感がロゴへの愛着を生み、そのロゴを身につけることが、ファン自身のアイデンティティの表現にもなっていく。そして、憧れていたレーベルと、今度はアーティストとして関わるようになる。
なんとも素敵な話ですが、同時にこのエピソードは、ブランド力の形成には、長年積み重ねてきた信頼だけでなく、
素直に「カッコいい!」と思えるデザイン性
も極めて重要であることを、改めて認識させてれるものだと思います。
そう考えると、PIZZA OF DEATHのロゴは、単なるレコード・レーベルの出所表示という枠を超え、パンク・カルチャーの一部になっているようにも思えます。
そして、そうしたブランド力を長期にわたって守っていくために、商標登録が大切な役割を担っているのです。
【本当はコワイ商標の話】音楽アーティストが、商標登録をすべき「これだけの理由」
https://onion-tmip.net/update/?p=1920
長く使える「ロゴ」制作と商標登録を、一体で考えるということ
ロゴトアールでは、ロゴマークの制作と商標登録を、
弁理士が一体となってサポートしています。
そのメリットは、単に「作成から登録までがスムーズになる」という点だけではありません。
PIZZA OF DEATHのように、
「ロゴが長く使われ続けるブランド」
になるためには、
デザインと、商標権の取得・登録商標の正しい使用といった
知財の観点を切り離さずに考える必要があるからです。
見た目として魅力的なロゴであること。
そして、そのロゴを安心して使い続けられる状態であること。
この二つが揃って、はじめてロゴは、事業にとっての「資産」価値のある権利になります。
考えてみれば、PIZZA OF DEATHのロゴも、誕生した瞬間から今のようなブランド力を持っていたわけではありません。
多くのアーティストが作品を発表し、ライヴを重ね、音楽ファンたちがその音楽を支持してきた。
その歴史の積み重ねによって、ロゴそのものに特別な意味が生まれてきたわけです。
そして、「AIR JAM2026」を通じて、その中心にいるハイスタと共に、PIZZA OF DEATHも新たなファンを獲得し、そのロゴへの関心や愛着がさらに広がっていくことでしょう。
それはすなわち、「ブランド価値を高めていく」ことでもあります。
あなたの事業のロゴが、どんなジャンルの商品・サービスを示すものであったとしても、PIZZA OF DEATHと同じように、
作った瞬間(だけ)ではなく、
使い続けた先で価値を持つ存在
であってほしいと考えています。
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