2026.5.29 金曜日

【レーベル・ロゴの世界】第8回「ビクターとニッパー君の物語」


ロゴマークを愛し、音楽を愛する弁理士による、世界のレコード会社・レコードレーベルのロゴマークへの、片思い的リスペクトを込めてご紹介する連載です。

その第8回は、日本の由緒あるレコード会社の一つ、

VICTOR(ビクターエンタテインメント株式会社)
https://www.jvcmusic.co.jp/

を取り上げたいのですが、2026年現在も勢いありますよね。

2014年デビューで頑張ってきた M!LKが、大ブレイク中ですし、

昨年から「怪獣」「いらない」もヒットさせているサカナクションは、2012年のヒット「夜の踊り子」が、韓国発のショート動画で使用されたことをきっかけにTikTok等でミーム化し、その流れが日本にも波及。再ヒット中です。

そして、さらに大御所、今年古希を迎えた 桑田佳祐 もますます凄みを見せています。

そんなビクター(エンタテインメント)のサイトを見ると、社名の横にあるのが、みなさんもお馴染み、

可愛らしい子犬のロゴマーク

です。こちらは「ニッパー(Nipper)」君というのですが、日本国内では、ビクターエンタテインメントの株主である「株式会社JVCケンウッド」の登録商標となっています。

登録番号1383675号 等
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-1975-057652/40/ja

そもそも、ビクターエンタテインメントのルーツは、1972年設立の「ビクター音楽産業株式会社」ですが、こちらは当時の電機メーカー「日本ビクター株式会社」の音楽事業部門が分社化して設立されたものなんですね(※日本ビクターはのちにケンウッドと統合され、上述の「JVCケンウッド」となっています)。

そしてそのルーツである日本ビクターの設立に深く関係しているのが、アメリカ資本の「The Victor Talking Machine Company」という企業なのですが、こちらはレコード会社であっただけでなく、レコードを聴くのに必要な商品も販売していました。そう、

蓄音機!

そう、このロゴマークにある通り、ニッパー君が耳を傾けているのが蓄音機です。亡くなったかつての飼い主の声が蓄音機から流れてきた時、ラッパの前で耳を傾けているのが、このロゴマークの原画「His Master’s Voice」(彼の主人の声)なのです。
(このエピソードについては、JVCケンウッドさんのこちらのサイトをぜひご覧ください。) https://www.victor.jp/nipper/

この素晴らしい原画が、商標として登録されたわけですが、一番古いものはここ日本でもなんと、

1905年(明治34年!)の商標登録です。

登録0023626号「HIS MASTER’S VOICE(ロゴ)」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-0023626/45/ja


商標権とは、商標に積み重なっていくブランド力を保護するものですから、知的財産権の中でも唯一(10年ごとの)更新が認められているんですよね。しっかりと更新されながら、現在も後継のJVCケンウッドさんの登録商標として保持されています。

ただ、自分はかつて、このニッパー君についてもう一つ疑問があったんですね。1992年に初めて行ったイギリスで見た、

CDショップ「HMV」

に、このニッパー君が描かれていたのです。

(筆者私物。かつてイギリスのHMVでCDかレコードを買った際にもらったバッグ)

HMVが日本に上陸したのが1990年ですから、もうその存在は知っていましたが、日本のHMVの看板にはニッパー君はいなかったんです。これはどういうことなんだろうと。

円盤式蓄音機「グラモフォン(gramophone)」を発明したのはアメリカの発明家「エミール・ベルリナー」ですが、彼は蓄音機の製造・販売する会社として、「ベルリーナ・グラモフォン」(Berliner Gramophone)という会社をアメリカで1895年に設立したそうです。この会社こそが、前述の「The Victor Talking Machine Company」の母体だったんですね。

さらに、米「ベルリーナ・グラモフォン」は、イギリスにも関連会社を設立します。それが「グラモフォン」という会社だったんです(※ちなみに、イギリスでは「Gramophone」は登録商標だったものの、蓄音機のことを指す言葉として「一般名称」化したんだとか)。

【本当はコワイ商標の話】 「普通名称化」~せっかくの登録商標が効力のないものに?<ONION商標> https://onion-tmip.net/update/?p=419

そしてそのグラモフォン社こそ、レコードの小売店「HMV」の母体(1921年設立)ともなったんだそうです(※レコードレーベルとしてのHMVも当時は存在しました)。そう、もうお気づきですか?

HMVとは、「His Master’s Voice」の頭文字をとったものだった!

んですね。

ただ日本では、当時の日本ビクター社の登録商標ですから、あとから日本で上陸したHMV (JAPAN)が、ニッパー君をロゴに使えなかったのも納得という感じです。

またこうしたねじれ現象は、音楽レーベルでも起きていて、前述の米「The Victor Talking Machine Company」は、その後「RCA」という会社に買収され、「RCA Victor」となります(1929年)。その後「RCA Records」と改称して(1968年)、当然ニッパー君を含むロゴマークを付したレコードを発売、多くのヒットを放った名門ですが、

(アメリカでのRCAのCM。1995年頃)

紆余曲折を経て、RCAは現在は、

SONY MUSIC ENTERTAINMENT (米国)の一レーベル

となっています(https://www.sonymusic.com/labels/rca-records/)。同社の大元はもちろん日本のソニーであり、日本のソニー・ミュージックと日本のビクターエンタテインメントとは、音楽業界ではライバル関係ですよね。しかし、ニッパー君は、さまざまなレーベルにその足跡を残しながら、各レーベルが切磋琢磨して素晴らしい音楽とアーティストが届けられるのを、見守っているような気がしませんか?

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さて今回の記事でも、

一度登録したら、半永久的に守ることのできる「商標登録(商標権)」で、ブランドを守る

というストラテジーが、随所に見られましたね。もちろん、権利として守るだけでなく、その商標がブランド足りえるのは、

自社のアティチュードを現したロゴデザイン

と、そのロゴデザイン/ロゴマークが付された商品またはサービスのクオリティがあってこそでした。

ロゴトアールでは、ロゴマークの制作と商標登録を、
弁理士が一体となってサポートしています。
そのメリットは、単に「作成から登録までがスムーズになる」という点だけではありません。

ニッパー君のロゴマークのように、
「ロゴが長く使われ続けるブランド」になるためには、

デザインと商標の観点を切り離さずに考える必要があります。

見た目として魅力的であること。
記憶に残るストーリーがあること。
そして、安心して使い続けられること。

これらが揃って、はじめてロゴは資産になります。

音が鳴っていない瞬間にも、
ブランドは存在し続けています。

だからこそ、その「名前」と「ロゴ」を、
どう作り、どう守るかが重要になります。

これから先も、ニッパー君のロゴが、世界中の音楽のそばにあり続けるように、

あなたの事業のロゴもまた、
作った瞬間ではなく、
使い続けた先で価値を持つ存在であってほしいと考えています。

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好評です! ONION商標の新サービス
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