2026.4.2 木曜日
【レーベル・ロゴの世界】第7回「MUTE RECORDS」
ロゴマークを愛し、音楽を愛する弁理士による、世界のレコード会社・レコードレーベルのロゴマークへの、片思い的リスペクトを込めてご紹介する連載です。
その第7回は、イギリスの老舗インディ・レーベル、
MUTE(ミュート) を取り上げます。

※EUで商標登録(No.005171161)されている、こちらのロゴマークも印象深いですね。

「MUTE」という名前が意味するもの
さて、「MUTE」という名前が意味するもの
「MUTE=無音」。
音楽レーベルとしては、少し不思議な名前です。
しかしこの名前こそが、このレーベルの本質をよく表しています。
MUTEは1978年、ダニエル・ミラーによって設立されました。
もともとは自身のプロジェクト「The Normal」のリリースのために立ち上げられたレーベルでしたが、
やがてさまざまなアーティストを擁し、特に
エレクトロニック・ミュージックの重要な拠点
となっていきます。
派手さではなく、実験性と独自性。
沈黙の中から、新しい音を生み出す。
その姿勢が、「MUTE」という名前に凝縮されているように感じるのです。
Vince Clarkeと、MUTEの系譜
まず、重要なアーティストとして、Vince Clarke(ヴィンス・クラーク)という人がいます。
ヴォーカリストのAndy Bellとのデュオ「ERASURE(イレイジャー)」は、86年のデビュー以来、19枚のスタジオ・アルバムを発表し、ベスト・アルバムを含めれば5作の全英No.1アルバムを獲得、もちろん数多くのヒットを放っています。
また、その前に、女性ヴォーカリスト Alison Moyetと組んだデュオ「YAZOO(ヤズー)」は、81年〜83年というわずかな活動期間・2枚のスタジオ・アルバムを残したのみですが、2000年代以降も再結成ツアーが欧米では成功するなど、エレクトロ史においては重要な存在となっています。
レーベルの顔「Depeche Mode」
そして、彼が(YazooやErasureの前に)所属したもう一つのグループこそ、MUTEが放った最も成功例でもあります。
Depeche Mode(デペッシュ・モード) です。
1981年のデビューから現在に至るまで、
エレクトロニック・ミュージックの歴史を更新し続けてきた存在であり、
MUTEのブランドイメージそのものとも言えるアーティストです。
ただ、面白いのは、初期の音楽制作をリードしていたVince Clarkeが、81年には早々と脱退してしまい、ピンチかと思われたところ、むしろそこから他のメンバーの音楽的才能が開花していくんですね。
「インディー界初のアイドルグループ」などと言われていた彼らが、80年代後半には「エレクトロシーンが生んだ、最高のライヴ・バンド」とも言われる存在となり、アメリカも制覇することとなります。
ここ日本では、アルバムを出す度に来日公演を行い、熱狂的なファンを獲得していきます。そして、1990年には、最大のヒット・アルバム『VIOLATOR』を引っ提げて、日本武道館公演も行ったのです(筆者も見に行きました。勢い余って、東京から遠征して、名古屋市公会堂での公演も行ったなぁ)。
しかし、まさか、そのツアーが(2026年現在)最後の来日公演になるとは、知るよしもありませんでした…つまり、
90年のツアーを最後に、日本でのライブは実現していないのです。
(次作に伴う『Devotional Tour』が、94年にアジア/オセアニアまでは行われたのですが、そこに日本が含まれなかったのが痛かったですね…)。
そんな、日本では観ることが極めて難しくなった、MUTEの顔とも言える彼らですが、昨年(2025年10月)、彼らの最新ライヴを「映画館」で体験する機会が、ここ日本でも訪れました。
2023年9月21日、23日、25日の3日間で20万人以上のファンで埋め尽くされたメキシコシティ・フォロ・ソル・スタジアムでのコンサートの模様を収録した、貴重なライヴ・フィルム『DEPECHE MODE: M』が、世界60カ国以上、2500以上の映画館で公開されましたが、そのワールド・プレミア(世界公開初日)には、日本での上映も行われたのです(※筆者も行きました。なお、※現在は、NETFLIXで視聴することができます。 https://www.netflix.com/title/82623289)。
このライヴ・フィルムに収められた「メメント・モリ・ツアー」は、1980年のバンド結成以来のメンバーであった、”フレッチ”ことAndy Fletcher(アンディ・フレッチャー)が、2022年60歳の若さで突然この世を去った後、残された創設メンバーの2人:Dave Gahan(デイヴ・ガーン)とMartin L. Gore(マーティン・ゴア)が、悲しみを乗り越えて成し遂げた、まさしく”フレッチ”へのレクイエム・ツアーでした。
DEPECHE MODEが、幾多の試練を乗り越えながら、バンドを継続してきたこと、
そしてその本拠地とも得るMUTEを、Daniel Millerは(一時期はメジャー傘下となったこともありましたが)音楽的に筋の通ったレーベルとして守り続けてきたこと、
そしてそのレーベル・ポリシーを表現しながら、ブランド力を保護してきたのが、
「MUTE」の登録商標です。
MUTEのロゴは、非常にシンプルです。装飾を極力排したタイポグラフィは、レーベルの音楽性と同様に、無駄を削ぎ落とした印象を与えます。
しかし、この「シンプルさ」こそが強さでもあります。
どんなアートワークにも自然に溶け込みながら、確実に「MUTEの作品」であることを示す。
主張しすぎないのに、消えない。まさに“mute”という名前の体現とも言えるロゴです。
なお、ここ日本では、「MUTE」【標準文字商標】として商標登録されています。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-1998-003325/40/ja
海外のインディペンデントレーベルであっても、日本市場において商標としての保護が図られている点も注目に値します。
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長く使える「ロゴ」制作と商標登録を、一体で考えるということ
ロゴトアールでは、ロゴマークの制作と商標登録を、
弁理士が一体となってサポートしています。
そのメリットは、単に「作成から登録までがスムーズになる」という点だけではありません。
MUTE レーベルのように、
「ロゴが長く使われ続けるブランド」になるためには、
シンプルでありながら長く使われ続けるロゴを実現するためには、
デザインと商標の観点を切り離さずに考える必要があります。
見た目として魅力的であること。
そして、安心して使い続けられること。
この二つが揃って、はじめてロゴは資産になります。
音が鳴っていない瞬間にも、
ブランドは存在し続けています。
だからこそ、その「名前」と「ロゴ」を、
どう作り、どう守るかが重要になります。
DEPECHE MODEらレーベルを代表するアーティストたちの作品が、
これから先もMUTEの商標・ロゴとともに聴かれていくように。
あなたの事業のロゴもまた、
作った瞬間ではなく、
使い続けた先で価値を持つ存在であってほしいと考えています。
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